JOURNAL

All for more comfortable surfing
JOURNAL #20
DATE : Sep 16, 2022
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JOURNAL #20 Sep 16, 2022

All for more comfortable surfing

- RASH WETSUITS のクラフトマンシップ -

メイドインジャパンのウェットスーツは世界一と名高い。なかでも最高峰の技術とマテリアルを誇るのが、〈Pilgrim Surf+Supply〉のファウンダー、クリス・ジェンティールが惚れ込んだ〈RASH WETSUITS〉だ。ともに歩みを進めて10年。世界のリーディングブランドのこだわりと根底に流れる思いをあらためて知るために、湘南・鎌倉にあるオフィス、そして辻堂のファクトリーを訪れた。

Photography:Kensuke Ido
Interview&Text:Jun Takahashi

必要に迫られて生みだしたサーフィン専用のウェットスーツ。

「わたしが当時着ていたウェットスーツはダイビング用のもの。全然動きが悪いんです。その着心地のせいで、冬はサーフィンをやめたことがあるくらいひどかった。『こんなかったるい思いをしてサーフィンするのがいやだ』という気持ちから、わたし達のウェットスーツ作りは始まっています。『無いなら、自分達の手で動きやすいサーフィン用のウェットスーツを作ろう』と」

〈RASH WETSUITS〉のファウンダー、岡廣光さんは創業のきっかけをこう話す。ときは第一次サーフィンブームを経た1977年。そのころの日本には、サーフィン専用のウェットスーツメーカーはまだ数社のみ。サーファー達はより快適なギアに飢えていた。

「最初は鎌倉の腰越にラッシュサーフショップという名前でお店を出したんですよ。そこでウェットスーツをメインにサーフィンのギアを売っていたら、各地から『ウェットスーツが欲しい』というオーダーが来るようになってきて。それで卸をするようになったんです」

そうして始まった〈RASH WETSUITS〉のこだわりは "THE BEST QUALITY"。岡さんは話を続ける。

「うちは素材からこだわりました。気泡がしっかり入っている保温性が高い上質なラバーを使っていたから、値段はほかより少し高かった。安く売るよりも、品質を維持したかったんです。それでもみんな気に入って買ってくれました。本来ウェットスーツって着ないほうが楽じゃないですか。サーフィンをするならボードショーツ1枚がいちばんいい。だからわたし達は、裸の感覚でサーフィンができるようなウェットスーツを作りたい。『どこのメーカーよりも軽く、動きやすく』という思いが基本ですよね」

ベストクオリティを追求するための試行錯誤。

〈RASH WETSUITS〉はウェットスーツのすくい縫いを表側に採用した日本で最初のウェットスーツメーカーだ。

「知り合いに腕のいい職人さんがいたんです。その人と一緒にどんどん新しい開発をしました。生地の反対側に糸が抜けないように縫える『すくい縫いミシン』は、もともと毛皮を縫っていた機械なんですよ。そのミシンをウェットスーツメーカーは応用していた。でもあまりきれいに縫えないから、ウェットスーツの内側を縫っていたんです。でもそれだと使っているうちに表側ののりが汚れてくるし、パクッと開いてきちゃう。それで表側を縫うことにしたんです」

現在のサーフィン用ウェットスーツのほとんどは表側をすくい縫いをしていることから、〈RASH WETSUITS〉の試みがいかに性能を押し上げたかがわかる。やはり製造工程の難易度から、それまで通例となっていたセットインスリーブだった袖をより運動性の高いラグランスリーブに初めて変更したのも同社だ。これらの工夫は、日本のウェットスーツ作りを世界トップに導いた功績のほんの一部。今もよりよいウェットスーツを作るための試行錯誤を重ねながら、〈RASH WETSUITS〉はリーディングブランドとして確固たる地位を築いている。

価値を高めあう〈Pilgrim Surf+Supply〉とのコラボレーション。

「そもそものウェットスーツに対する考え方が違うんです。海外では洋服を買う感覚で、店頭にならんでいるものをそのまま買う。試着もしないでサイズだけ見て買う人が多いです」

〈RASH WETSUITS〉の営業部長、齋藤裕さんは日本と海外のウェットスーツに対する意識の違いに衝撃を受けたという。いっぽうでクリス・ジェンティールは、日本のウェットスーツに対するこだわりときめ細かな意識に感心する。

「アメリカでは、ウェットスーツはほとんど使い捨ての道具だと思われています。日本製にくらべると価格も安く、2~3年ごとに買い替える人が多いので、一般的にあまり手入れをしないようですね。日本では既製品を購入するよりも、オーダーメイドする人が多い。だからこそ、ウェットスーツはより大切にあつかわれているように思います」

近年、〈RASH WETSUITS〉のようなカスタムメイドできる日本製のウェットスーツは品質がいいと海外のサーファーにも認知されつつある。〈Pilgrim Surf+Supply〉と〈RASH WETSUITS〉はフレンドシップを結び、ともによりよいウェットスーツを世界に広めてきた。齋藤さんは、コラボレーションすることで新たな知見を得ているという。

「この夏にコラボレーションしたウィメンズのロングジョンとロングスプリングの製作は新鮮でした。真夏に着られるようなウェットスーツが欲しいというアイデアが始まりです。〈Pilgrim Surf+Supply〉の女性スタッフの要望を聞きながら、もともとうちにある型を微調整しながら形にしていきました。日焼け跡が綺麗になるように、程よく水着を見せられるようにとバランスをとったんです。着た人達からもいい評価をもらっています。僕らはウェットスーツに対してとにかく温かく、動きやすくて脱げないようにとハードなとらえ方をしてしまいがちです。でも女性の目線は違うんだなと勉強になりました」

性能を第一に求めた結果のエコロジー。

ウエットスーツの主原料として長年主流であるクロロプレーンは石油由来で、廃棄の際に高温で燃やさないと有毒ガスを発するなど、じつは自然環境にやさしいものではない。そこで岡さんは、炭酸カルシウムを主成分とする石灰岩、ライムストーンを使った原反の使用を増やしているという。ライムストーンは地球に大量に埋蔵する豊富な有用天然資源。ウエットスーツの原反のゴムをライムストーンのものに変えていくことによって、石油の使用量と製造・燃焼時におけるCO2排出量の削減につながる。エコロジカルな視点から、近年注目を集めている素材だ。

「うちもSDGsを意識してはいます。自然環境にいいという部分でこだわってる部分も多いですよ。環境負荷が少ない水性のボンドを試したりね。ただ、自分達の理想はやっぱり快適なサーフィン。あんまりサーフィンに影響するようなものを作ってしまったら元も子もない。だからゆっくり、できる部分は取り入れていこうよというスタンスで動いています」

ライムストーンにしても、その性能をかっての選択だそう。

「ライムストーン入りのゴムのほうが保温性が高い。発砲の密度が細かくて熱を通しにくいんです。性能がいいものだから使った結果、自然環境にもいいということですよね。でもエコな部分についてはあえて表に出さないですよ。環境にいいことを売りに商売しないから。なんか格好悪いじゃないですか(笑)」

そうおどけながらも、岡さんはウェットスーツにおけるエコロジーの真髄をこう語った。

「あとはね、無駄を出さない。いいものを作って、より長く愛用してもらう。エコという観点では、そこがいちばん大事だと思います。だから修理などのメンテナンスもしっかり対応する。何事もよりよくするためにできることって、やっぱり細かいことですよね。小さな行動を積み重ねるしかない。いっきにやると無理が出るので、じっくりとできる部分からやっていくしかないと思いますね」

すべてはサーフィンのために。守るべきシンプルな思い。

〈Pilgrim Surf+Supply〉と〈RASH WETSUITS〉が手をとりあってから10年の月日が流れた。クリスは今も〈RASH WETSUITS〉のウェットスーツの袖に初めて手を通したときの感激が忘れられないと話す。

「衝撃的なゴムの軽さと柔軟性を持っていて、そのフィット感と美しいデザインに圧倒されました。〈RASH WETSUITS〉は独自のクラフトマンシップを貫き、世界最高のウェットスーツを作っています。そして何よりもチームが特別です。謙虚で勤勉なコアサーファーが、最高のパフォーマンスを発揮するためのウェットスーツ作りに情熱を注ぎ続けているんですから」

岡さんはアメリカの東海岸からオーダーを受けたサーファーからうれしいメールをもらったと顔をほころばせる。

「モントークは夏はボードショーツ、冬はドライスーツというように寒暖の差が世界でもっとも激しい場所のひとつ。そのさらに北のマサチューセッツ州にある島から注文が来ましてね。納品してしばらくしてから、感激のメールが届いたんです。『〈RASH WETSUITS〉のウェットスーツは段違いだ。最高なウェットスーツとすばらしい職人技に感謝してる』ってね」

岡さんの自宅の離れにあった6畳のスペース。1977年、〈RASH WETSUITS〉のウェットスーツはそこで生まれた。そして辻堂に今もフル稼働するファクトリーを構えて45年あまり。今日も世界中のサーファーに喜びをあたえながら、〈RASH WETSUITS〉は進化を続けている。目指す未来を尋ねると、岡さんはこう話を締めくくった。

「変な言い方かもしれないけど、あんまり変わんないようにしたいな。うちのスタッフはみんな波乗り好きだから、サーフィンするお客さんのことを考えながらひとつひとつ手作りしています。サーフィンするうえで、どうあるべきかを考えながら作る。そこがうちのいいところだと思うんですよ。これを崩さないようにすることは、じつはけっこう大変。欲も出るし、『もっと作って』と言われますから。でもクオリティを第一に考えて、自分達がいいと思うことを守り通していく。そんなうちの基本的な部分を壊さないように、このままやっていきたいです。みんながうちのウェットスーツ着て、楽しいサーフィンしてくれればいいな」

information

"THE BEST QUALITY"の一着を。
〈RASH WET SUITS〉のカスタムオーダー会を開催

ウィンターシーズン到来に向けて〈RASH WET SUITS〉のカスタムオーダー会を開催します。両面にチタン合金を施し保温性に優れた『ATHLETE JERSEY』、保温性と速乾性に優れた最高峰のラバーと起毛を使用した新素材『MONT BLANC』を中心にバリエーション豊富なマテリアルが勢揃い。また通常オーダーにはない〈RASH WET SUITS〉のクラシックロゴのほか、〈Pilgrim Surf+Supply〉のペナントロゴも選択できるなど、当期間限定の特別なカスタムオーダーが可能です。なお10月1日(土)、2日(日)の二日間は〈RASH WET SUITS〉スタッフが来店。ウェットスーツのスペシャリストによるご案内と採寸のもと、イメージとサイズに合った一着をお選びいただけます。

詳しくはこちらよりご確認ください。


開催期間
2022年10月1日(土)〜10月10日(月)
Pilgrim Surf+Supply
住所:東京都渋谷区神南1-14-7
電話番号:03-5459-1690
2022年10月6日(木)〜10月10日(月)
Pilgrim Surf+Supply KYOTO
住所:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2 新風館1階
電話番号:075-708-6632
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