JOURNAL

TODD ST. JOHN
CREATES PROBLEMS
JOURNAL #03
DATE : Jun 15, 2017
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JOURNAL #03 Jun 15, 2017

TODD ST. JOHN CREATES PROBLEMS

- 問題に挑戦し続けるトッド・セント・ジョン -
  • 長いキャリアを持つ Todd St. John(トッド・セント・ジョン)のクリエイティブな仕事ぶりは、多方面に渡る。Money Mark(マニー・マーク)のイラストを描いたり、「New York Times」用のストップモーションビデオを作ったり、今はもうなくなってしまった<Green Lady>というレーベルのTシャツブランドのグラフィックをデザインしたり。また時には、サーフィンのUSオープン用の限定おもちゃを作ったり、波の形を真似たテープディスペンサーを作ったりもした。彼の作品は世界中で展示され、9年間「Yale芸術大学院」で映画とビデオのデザインを教えていたこともある。<Pilgrim Surf+Supply> のロゴも実は彼の作品だ。

    控えめな性格の彼は、常に解決策を追求したモノづくりに取り組んでいる。クライアントが受け入れられる限界を考慮しながら、彼は自身への挑戦を見出し、色々な角度から作品作りに取り組む。彼の作品は本当に多種多様だけれど、一つ一つの作品にしっかり彼の遊び心が見て取れる。僕たちはブルックリンにある彼のスタジオ「Hunter Gatherer」を訪れた。約3mもある<Dano>のシングルフィンがドアの上からぶら下がっていたり、木材工房がビデオの編集部屋の後ろに隠れたいたりと、ここでは彼の想像力のすべてを見ることができる。創造性を刺激し、生み出しているものが一体何なのか語ってくれた。

    ※このインタビューは2014年6月に行われたものです。

    TODD ST. JHON http://toddstjohn.com/
    Hunter Gatherer http://huntergatherer.net/
いつ頃から"デザイン"に対して興味を持ち始めたのですか?
僕はハワイのオアフ島で生まれ育った。小さい時はサトウキビ畑の目の前に住んでいて、今ではすごくいい場所だったと気付ける場所の一つだね。僕はあまり運動をする方ではなかったけど、常に海の近くにいて、そこで育ったことは僕の人生に大きな影響をもたらしている。水に対しての感覚が他の場所で育った人とは全然違うと思う。水に囲まれると家にいるみたいに落ち着くんだけど、水が見えなかったら、心地悪いくらいなんだ。18歳の時にはそこを出たけど両親と家族はまだそこに住んでいて、今でもほぼ毎年ハワイには帰っているよ。
子供の時から色々なことに興味を持って、一つの事に収まることはできない性格だった。アートなんてどうしたらいいのか知らなかったし、特に両親も興味があったわけではないから、どうやったらアーティストになれるかなんてわからなかった。きっかけは、友達の父親がハワイの小さなエージェンシーでデザイナーをやっていて、アートで生きている人が実際にいることを知ったんだ。ここにたどり着くまではかなり時間がかかった。特に最初は、音楽と映画に興味があって、デザインの世界に入り込んでいってからも、それが一般に"デザイン"と呼ばれているものだとしても、実際は型にはまらず色んなことをやってもいいと思っていた。自分が何をやっているのかの説明が難しいし、それが自分の好きなカテゴリーに当てはまっていないこともあるけど、それはそれで良かったりするときもある。まず一つの表現方法でやってみてそれから別の方法も試してみるのが好きで、いつもその過程を楽しんでいるんだ。
  • どういった手法で作品を生み出しているのですか?
    成長するにつれて、父親とガレージでたくさんのモノを作らされていた。当時は好きじゃなかったけど、大人になるにつれてなんだかそれが当たり前になったというか、僕のやっていることのほとんどのことは、モノを作って写真を撮るということなんだ。例えばスケッチを描いた場合は、ただそれがそこにあるだけだけど、何かを組み立てたらもっとたくさんの可能性があって、光らせたり、触れたり、その背面までも触れたり、なにかの横に置いたりもできる。モノを作ることはたくさんの可能性を生む。たまに自分自身に難題を与えることも好きだね。不便の多い場所では自分を追い込める。そうすることで本当なら向き合う必要もなかったような問題までも解決することができるし、仕事をしながら学ぶ機会にもなるからね。この志があれば、常に自分自身に挑戦を与え続けることが出来ると思う。モノを作って撮影し、それをさらに複雑にするとより多くの課題を生み出すことにはなるけど、それは同時にたくさんの可能性を生みだすことにもなるんだ。
デザインする上でごだわっている部分は?
デザインはシンプルであることが大切で、そこにこそたくさんの人が魅了されるんだと思う。それはそれでいいと思うんだけど、その背後に複雑さが潜んでいるからこそ僕は面白いと常に思っているんだ。他の人もきっとそこに面白さを感じているはず。デザインにはそう言う二面性があるからこそ面白いのだと思う。

人はデザインにあまり期待していない場合もあるけど、たくさんの人、特に若い人たちはデザインを通してビジュアルを吸収していると思う。そしてデザインにアイディアを上手く取り込むことができると、実際に予想していたものより複雑なものになって、本当にパワフルになるんだ。
魅力ある人、魅力的だと感じる人とはどうのような人ですか?
僕が最も興味のある人は、表現が豊かな人かな。多種多様な相手と通じ合える人。例えばJim Hansen(ジム・ハンセン)※⑴。定番かもしれないけど、Carl Sagan(カール・セーガン)※⑵のように複雑なことを分かりやすくシンプルに伝えることができる人。多くの家具デザイナーたちも同じような考え方をしていて魅力的だと思う。

※⑴ジム・ハンセン/James Edward Hansen(コロンビア大学 地球環境科学部 助教授、科学者)、※⑵カール・セーガン/Carl Edward Sagan(アメリカの天文学者、作家、SF作家)

あのトレンド、このトレンドと指摘するのは簡単。いつもトレンドに沿ったようなことは避けて、ただ自分が好きなことをやって流行りとかは気にしないようにしているのだけど、そこが面白いところ。必然的に人間って影響されていて、それを気にしていても、意識的に気にしないようにしていても、いずれにしろやはり影響されるんだと思うね。

年をとることで、もしかすると自分はそれほどユニークでなかったことに気づくかもしれない。子供ができてそういう風に感じ始めることもあると思う。僕は早くに自分ができないことや楽しいと感じることを自覚する大切さを理解していたと思う。だから、得意、不得意 に応じて人生設計することができたよ。
あなたにとってのアート・アーティストとは?
自分はアーティストと呼ぶより、"デザインをしている"と言ったほうがしっくりくる。そもそも自分自身をアーティストと呼ぶことに違和感を感じているんだ。僕が自分を"デザイナー"と呼んでいれば、僕のアートを嫌う人でも、僕の絵がプリントされたTシャツを着てくれるかもしれないしね。"デザイン"の方が人に受け入れられる柔軟性があると思う。それにデザインにはコラボレーションもある。アーティストは自分自身で問題を生み出さない限り解決策も導けないけれど、僕はデザイナーとして人と一緒に世界に存在する疑問に答えを見つけだすという作業が好きなんだ。だから僕は作り続けるんだと思うな。
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