JOURNAL

Cultivating good old ways
JOURNAL #17
DATE : Oct 20, 2020
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JOURNAL #17 Oct 20, 2020

Cultivating good old ways

- 古き良き方法を掘り起こす -
フランスの20世紀前半のワークウェアに影響を受け、フランス語で"道具・ツール"を意味するブランド<Outil>のデザイナーを務める宇多悠也さん。フランス海軍の生地を現地で復刻生産し、日本で染めたラッセル編みの『TORICOT VIVIY』を、今シーズン「Pilgrim Surf+Supply」で展開している。

Photography:Kensuke Ido(BEAMS CREATIVE INC.)/ Yuya Uta(Outil)
Text:Yumiko Sakuma
自分のブランドを始めるまでは、デニムブランドからキャリアをスタートし、フランスでの買い付けやユニセックスブランドの企画の仕事をしていた。
「ビンテージの買付けをするうちにだんだん良いアイテムが集まらなくなったり、それだけではおもしろくなくなってきて・・・自分が好きなようにするためには、現地でつくることしかないって思うようになったんです」
特に好きで、長年コレクションしてきたのは、フランスの、それも30年代から40年代にかけてのワークウェアだった。
  • 「当時は、細い糸を高密度で織っていた分、経年変化しても密度が高いゆえ光沢感を失わないんです。40年代までは縫製術が未熟だったからか、強度が求められるアームホールの部分でも折り伏せ(という手法)で縫っていたフランスの服作りも、40年代から50年代になると、アメリカの影響を受けたのか、ダブルの巻き縫いやチェーンステッチが多々使われるようになって合理的な方向に変わり始めるんです。それ以前のやり方は、縫製の強度という観点から見ると劣るけれど、それが当時のフランスのワークウェアが持つエレガンスを作り出していたと思うんです」
仕事やワインへの愛を通じて好きになったフランスの空気感を取り込みたいーーそれを実現しようにも、フランス産のタグがついた商品でも、その大半の過程は他国で行われていたり、工場がフランスにあっても、縫い手がフランス人ではなかったりといったシビアな現実がある。
「そうなると、"フランスの空気感を取り込みたい"という意図とずれてしまう」
もはや本家のフランスでも継続されていない手法による織りを"再現"するために、当時使われていた織機を扱える職人を自分の足でひとりひとり探し、・・・という長いプロセスを経て、今は、現地でオリジナルの生地を生産している。
「デッドストックの生地を使って洋服を作るというやり方もいいと思うんですけど、当時の生地を再現する"背景"を作ることのほうが自分には魅力的なんです。今は、当時の技術を持っている熟練の職人が仕事を続けたいと思う限り続けられるように関係を続けながらも、アンティークの織機を扱える若手のこころざしあるフランス人と一緒に生地を開発しています」
もうひとつ、宇多さんの服作りの核をなすエレメントに、国内で行っている染めの過程がある。
「以前から、植物の染めに挑戦していたんですが、その過程で、染工場を引退して、後進の指導をしている染め手に出会って、一緒にやらせてもらえるようになりました。僕は、見たときに「青」という人も「黒」という人もいる曖昧な色が好きで、その色を作るために、何度も試作を重ね、インディゴと墨で染めるやり方にたどり着きました。今は、誰が作った原料で染めるのか、というところまで追求しています」
たとえば最近は、知り合いのワイン生産者から剪定された枝をもらって染めをやってみた。
「赤白ブドウが混ざっていたのでほんのりしたピンクを想像していたのですが、抽出後、二週間置いたら酸化し、とてもきれいなゴールドに染まった。意図していなくてもそんなおもしろいものづくりができる。他にも、尊敬できる生産者たちとの間で、いろんな計画を進めています」
服作りで影響を受けたのは「アノニマスなフランスの古いワークウェア」、好きなブランドは「フランス海軍」という宇多さんだが、もっと大切にしていることがある。それは出会った人たちと一緒に何かを作っていくプロセスだ。
「僕はとにかく協調性がなくて、学生時代から生きづらさを感じていた。人に合わせることができなくて、学校に行くのも辛かったんです(笑)。何か表現する方法を持たないと、苦しいままじゃないかって思って、ものづくりをはじめたんです。人づきあいが苦手な自分でも、これ(服)があるから人と付き合える、という"ツール"だと思っています」
だからこそ、足を運び、時間を一緒に過ごすことで、自分が一緒にやりたいと思う相手を見つけ、協業するプロセス自体に重きを置いている。今、若手フランス人と協業しているジュラという地域は、偶然にもワイン生産地としても有名な土地で、織り手と出会い、ものづくりをすることになった。訪れたワイナリーの人たちが吹聴してくれたおかげで、現地での人間関係も広がり、ワインと服を物々交換したりしている。コロナ禍が始まるまで、年に何度かのフランス滞在で、自分のバランスを整えていたと話してくれた宇多さん。フランスの何がそんなに水が合うのかを聞いてみた。
  • 「フランス人にとっては、会話を楽しみ食事をすることが何よりの喜びです。自分が何が好きか、どう思うのかなど、エスプリある会話を楽しむ人たちです。そういう文化に身を置くことで、みんな違っていいんだと気づけた。そこに心地よさがある」
何年もの努力が実って、織りを協業している若手パートナーの仕事も軌道に乗ってきた。
「仕事を作るという使命感があるわけではないんですが、こういうものづくりをやっていかなければ、自分の表現ができなくなる日が来る。それを防ぐための努力をするのは、自分の仕事だと思っています」

Information

  • Saix AIO
    Color:ecru
    Size:0 / 2 / 3
    Price:¥42,000+Tax

  • Cures PANTS
    Color:willow
    Size:00 / 1 / 2 / 3
    Price:¥28,000+Tax

  • Moriat SHIRT
    Color:meli melo
    Size:0 / 2 / 3 / 4
    Price:¥30,000+Tax

<Outil>のアイテムは「Pilgrim Surf+Supply」、「Pilgrim Surf+Supply KYOTO」にてお取り扱いがございます。詳しくはショップまでお問い合わせください。

Pilgrim Surf+Supply
所在地:東京都渋谷区神南1-14-7
電話番号:03-5459-1690
Pilgrim Surf+Supply KYOTO
所在地:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2 新風館1階
電話番号:075-708-6632
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