JOURNAL

From Aizu to Brooklyn
JOURNAL #13
DATE : Feb 12, 2020
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JOURNAL #13 Feb 12, 2020

From Aizu to Brooklyn

- 会津からブルックリンへ -
会津木綿をご存知だろうか。福島県西部に伝わる平織りの木綿織物のことで、日本を代表する伝統工芸品のひとつとしても有名だ。そんな日本の伝統的な織物を〈Pilgrim Surf+Supply〉は先シーズンより、ウエアに採用している。日本の、そして東北地方の伝統的木綿が海を渡り、ヒップな都市ニューヨークのブルックリンにたどり着いた。そもそも会津木綿とはどのような織物で、はたまたどのような経緯で〈Pilgrim Surf+Supply〉が使用することとなったのか。それらの答えを求め、福島県は会津若松にある織物工場を訪れた。

text&photo:Pilgrim Surf+Supply
江戸時代から脈々と続く伝統木綿。
四方を山々に囲まれた会津盆地の南東に位置する福島県会津若松市。この地に120年以上の歴史を持つ織物工場がある、それが原山織物工場だ。会津木綿を作り続けておよそ120年。歴史ある工場であることは言うに及ばずだが、〈Pilgrim Surf+Supply〉のウェアで使用されている会津木綿は、この工場で作られている。「夏はさらっと涼しく、冬は綿本来の暖かさで1年中着用できる、それが会津木綿の特徴です」そう語るのは、原山織物工場を運営する株式会社はらっぱの代表である山崎ナナさん。彼女もまた会津木綿に魅了された1人であり、とあるきっかけからこの工場の経営に携わることになった。
「この工場に携わる前からアパレルのブランドを手がけているのですが、お客様から会津木綿をご紹介していただいたんです。『せっかくなら日本の生地を使った方がいい。私の地元に会津木綿という素晴らしい生地がある』と。で、早速会津へ向かい、この木綿と出逢いました。もちろん、会津木綿の虜となったのはいうまでもありません。会津木綿は、会津盆地という過酷な土地の運命を表現した素材です。夏は暑く、冬は寒い盆地ならではの気候。会津木綿は戦国時代に誕生してから、会津の気候に寄り添って400年以上かけて改良されてきました。陸奥国会津郡(現在の福島県西部)に伝わる伝統工芸品であり、木綿平織の堅牢な織物として、古くから野良着など様々な衣服に使用されていました。厚みがありふっくらとした質感で、一般的な木綿平織物に比べて縮みにくい性質があるため、 家庭での洗濯にも十分耐えられるタフさも魅力です。」
会津木綿の特性は絶対にフィットする。想いを馳せること、約2年...。
そんな日本が誇る伝統工芸品が、どのような経緯で海を渡り〈Pilgrim Surf+Supply〉のプロダクトと融合したのか。この協業に尽力したのも、山崎さんであった。「会津木綿の素晴らしさを日本だけでなく、世界の人々にも知ってもらいたい。そんな思いを胸に、2015年ブルックリンに自分のお店を構えました。場所はウィリアムズバーグというエリアにあるんですが、歩いて数分のところに〈Pilgrim Surf+Supply〉のショップがあったんです。〈Pilgrim Surf+Supply〉のショップには1人のファンとしてしょっちゅう通っていて、商品を見ながら『このウェアに会津木綿を使ってくれないかなぁ』なんて妄想ばかりしていましたね(笑)。会津木綿ならではの堅牢性と丈夫さは、海のシーンに絶対合うと確信していたので。ただその頃はコネクションが一切なかったので、いつか訪れるチャンスをひたすら待ち続けました。そんなこんなで2年が過ぎた頃、〈Pilgrim Surf+Supply〉のオーナーであるクリスさんやスタッフと知り合いという〈SATOMI KAWAKITA JEWELRY(サトミカワキタジュエリー)〉の里美さんに『〈Pilgrim Surf+Supply〉で会津木綿を使って欲しい!』という私の想いを熱弁し、見事にアポイントを取ることができました(笑)。そして、何年も描いてきた私の夢が今回現実となりました。本当に嬉しかったです」
会津木綿を生産する上でのこだわり。そして、未来。
120年続く原山織物工場は、染色を除く、すべての工程をこの工場内で手がけている。「実は先代が亡くなるまでは、染色もここでおこなっていました。しかし現在は染色のみ信頼のおける外部の会社に依頼し、それ以外の工程をここで行なっています。会津木綿ができあがるまでの話をすると、元をたどれば綿花の栽培から始まります。綿花の栽培は外国で行われますが、それを輸入し、糸にするのはもちろんこの工場です。糸を撚り、枷(カセ)にして、染めて、糊付けし、力を込め、天日干しし、経糸巻きと横糸巻き、経糸をのべて、綜絖に経糸を通し、織り機にかける。織工は、電動とはいえ気難しい織り機を優しく励ましながら、見守る。ひとつの織物ができあがるまでには、信じられないほど、人の手が入っています。この工程あっての会津木綿ですので、今後もこの流れで木綿を織り続けますし、今年の夏には染め場の改修工事が終わるので、いよいよ完全に自社で"染めから織りまで"が実現できるようになります。そうなるとかなり自由に天然染料などもチャレンジできるので、よりオーガニックなものや、純国産にもこだわってけるのではないかと思っています。価格的に衣料品には難しいかもしれませんが...」そんな夢を熱く語る山崎さんの表情は、とにかく輝いていた。

  • 日本の伝統工芸の素晴らしさに気づいていないのは、私たち日本人。
    日本には伝統工芸品と呼ばれるものが、どのくらいあるかご存知だろうか?
    優に1000を超える伝統工芸品が日本には存在する。しかし、大半の人は、指折り数える程しか頭には浮かんでこないだろう。山崎さんはそんな日本の実情についても語ってくれた。


    「日本は伝統産業が残っている希有な国なんです。産業革命以降、どこの国もそれまであった手仕事や伝統産業が絶滅してしまっていますが、日本には幸いにも沢山残っています。しかしながら、日本人ならではの美意識がそうさせるのか、情報が伝達しにくい地形の問題があるのか、どんな理由かはわかりませんが、日本人自体がその価値にあまり気がついていないんですよね。本当にもったいないことだと思います。織物に関していえば、日本には「土着の布」がまだまだ沢山あります。中でも会津木綿は丈夫で扱いやすく値段も手頃で、色柄も沢山あります。もっともっと会津木綿の素晴らしさを日本人はもちろんのこと、世界の方々に感じてもらえたらと思います。今回の〈Pilgrim Surf+Supply〉との協業は間違いなく大きな一歩になりました」

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