JOURNAL

Self Discovery for Social Survival
JOURNAL #15
DATE : Apr 30, 2020
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JOURNAL #15 Apr 30, 2020

Self Discovery for Social Survival

- 冒険に身を委ねておのれを知る -
<Pilgrim Surf+Supply>のファウンダー、クリス・ジェンティールが、初めて映像作品を監督した。レーベル、<Mexican Summer(メキシカン・サマー)>とのコラボレーションによって実現した『Self Discovery for Social Survival(セルフ・ディスカバリー・フォー・ソーシャル・サバイバル)』は、世界チャンピオンのステファニー・ギルモア、ライアン・バーチを始めとするプロのサーファー、ミュージシャンのコナン・モカシンやMGMTのアンドリュー・ヴァンウィンガーデン、またクリスのまわりの文筆家やアーティストたちが参加してできたサーフ映画だ。作品の成り立ちについて、クリスに聞いた。

Text: Yumiko Sakuma
Photo :Chris Gentile, Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
そもそもこのプロジェクトはどうやって発足したのですか?
友人でサーファーのキース・エイブラハムソンが、ミュージック・レーベルの<Mexican Summer>で、古いサーフ映画のリイシューを担当していて、『Morning of the Earth』や『Sea of Joy』など、60年〜70年代に作られ、サーフィンカルチャーの方向性に大いに影響を及ぼしたサーフ映画の音楽を手掛けていた。作られた当時、こういう映画を見たければ、上映会に行くしかなかったんだけど、サウンドトラックがテープで売られたから、人々は、その後も、音楽を通じて当時の映像を記憶していた。僕みたいにこういう文化に取り憑かれている人間は、音楽を耳にすると、サーフ映画のシーンが蘇るんだけれど、これがとてもパワフルな体験なんだ。
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
  • Photography:Chris Burkard
たとえば、サーフ映画のベストといえば、『Endless Summer』だと思うんだけど、サーフィンのシーンはほとんどない。サーフボードを探したり、波を待ったり、そういうことが、サーフィンと同じくらい、またそれ以上の体験をもたらしてくれたりもするってことを見せた映画なんだ。  ちょうど、こういう話をキースと話をしているときに、<Mexican Summer>が短編のサーフィン映像を作ろうとしていることを知って、サーファーのミュージシャンたちと2週間の冒険に出かけて、何が起きるか見てみようっていう提案をしたんだ。どんな波と出会えるのか、どんな天気になるのか、サーフィンできるのか、できないのか、そういう未知の旅を。自然と地球がすべてをコントロールして、宇宙のエネルギーに乗せてもらう。一緒に冒険に出かけて、それを記録し、ミュージシャンたちにはその環境を吸収してもらう。
  • Photography:Chris Gentile
旅先では、二人のシネマトグラファーが、サーファーたちの表情や光や波に反応して、好きなように撮影した。  ミュージシャンたちは、旅から戻ってきてすぐにスタジオに入り、自分たちが体験したことに合わせて曲を書いた。テーマは、作品に合わせて曲を書くのではなく、自分の個人的な体験を表現することだった。
  • Photography:Chris Gentile
参加してもらった人には、とてもゆるいディレクションを出した。自由にやってくれって。撮り方も、曲の長さも、サーフィンの仕方も。たとえば、『Endless Summer』の音楽は、編集された作品に対して書かれたわけだけれど、今回の映像は、これまでのサーフ映画とはまったく違う方法で作ったんだ。
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
となると音楽はすべてサーファー・ミュージシャンによる書き下ろしですか?
 全員がサーフィンしたわけではないんだよね。冒頭と最後には、映像やロケーションとは関係のないものを入れたかったから、スウェーデンのDungen(ドゥンエン)に曲を書いてもらった。  あと、ブルックリンを拠点に活動するジェフェリー・カントゥ・レデズマが、水の中にいる体験を想像して曲を書いてくれた。  シーンとシーンの間に、箸休めとして、アニメーションを入れたんだけど、そこには、70年代のバンドのアンビエントな曲を使った。曲を入れた。アニメーションは、イラストレーターでアーティストのベイリー・エルダーに、友人でアーティストのロバート・ベイリーはロゴをつけてくれた。
  • Photography:Chris Gentile
  • ジョナス・メカスがナレーションをつけているのはどうやって実現したのですが。
    何も期待せずにビーチに出かけたら、誰もいなくて完璧なサーフ体験が待っていた、みたいな体験だった。ジョナスは、<Mexican Summer> と協業して、フィルムのアーカイブを本にしようとしているところだった。何年も前に、ギャラリーのオープニングで話したことがあったんだけど、近づきやすいスイートな人だった。キースが「ジョナスに頼むってのはどうかな?」って言い出した。「冗談だろ?」って言ったけど、聞いてもらったんだ。サーフ映画のナレーションやらないかって聞いたら、ジョナスは「ワオ、それは奇妙だね、もちろんやるよ」って引き受けてくれた。  文章は、元プロ・サーファーで文筆家の友人ジェイミー・ブリシックに書いてもらった。ジェイミーはよく、インスタグラムで、ポストカードのようなポストをあげてるんだけど、それがフィクションなんだけど、ノンフィクションのように書かれていて、すごくいいんだ。ある夜、ジェイミーと二人で酔っ払って話をしながら、ジェイミーがノートを取って、他の人の体験を反映したりしながら書いたんだ。
  • Photography:Chris Gentile
タイトルはどうやってつけたんでしょう?
 この旅のアイディアは、必ずしも快適とはいえない環境に自分を置く、というところにあるんだ。今回の旅に参加した人たちは、それ以前はお互いのことをほとんど知らない間柄だった。そして、サーファー、ミュージシャンだけでなくて、毎回、サーフィンの外に何か表現方法を持っている先輩のような人に来てもらった。文筆家とか、歴史学者とか、映像作家とかね。
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
 この旅が素晴らしいものになるのか、ひどいことになるのかは誰にもわからない。波があるのか、ないのかも。だけれど冒険に出かけて、一緒に何かをしたり、時間を過ごし、お互いをサポートしあったり、影響を与えあったり、表現者として成長する。  あるとき、60年代のクライミング雑誌をパラパラって見ているときに、広告に"Self Discovery for Social Survival"って書いてあるのを見つけたんだ。社会生活における恐怖を克服してクライマーとしての成功を目指すことをテーマとした本の広告だった。自分を深く知ることで、他の人々を理解することもできるようになるというアイディアだったんだ。サーフィンにも似たところがある。
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
『BARBARIAN DAYS(バーバリアン・デイズ)』を書いたウィリアム・フィナガンは、サーフィンは単独で人格を作ることはできない、と言った。人格を作るのは、人間にかかっていると。同じように波を見ても、「全部オレの波だ」と思う人と、「隣の人とシェアしよう」と思う人がいて、サーフィンは、自分のことをたくさん教えてくれる。人間と自然の関係について、人間対人間、自分対自分の関係について、学ぶことがたくさんある。  僕にとってサーフィンは、自分がちっぽけな存在だっていうことをリマインドしてくれる。そして同時に、自分はちっぽけな存在であっても、自分の行動が、自分のまわりの環境に影響を与えるということも思い出させてくれる。海は、人類にとって、いまだにミステリアスな場所で、自分たちが何のために生きているのかを教えてくれる。そのエッセンスをとらえる映画にしたかったんだ。
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile
  • Photography:Chris Gentile

Self Discovery For Social Survival | Official Trailer (2019)

ブルックリンの音楽レーベル<Mexican Summer>と<Pilgrim Surf+Supply>によるコラボレーション作品。メキシコ、モルディブ、アイスランドの各地で撮影を行う。アラーラズやコナンモカシン、MGMTのアンドリュー・バンウィンガーデン、ピーキング・ライツなどのミュージシャンと、ステファニー・ギルモアやクリード・マクタガート、ライアン・バーチなどのプロサーファーたちが、共生関係にある音楽と波、環境とローカルカルチャーを巡る旅に出かける。ナレーションは映像作家・詩人・活動家としても有名なジョナス・メカスが担当。本作は彼の遺作の一つとなった。

Self Discovery For Social Survival

Official Site:https://www.sdssfilm.com/
Vimeo:https://vimeo.com/ondemand/selfdiscovery/342282096



Information

Self Discovery for Social Survival『Graphic T-shirts』by Pilgrim Surf+Supply

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プリントグラフィックは、ムービーのアートディレクションおよびアニメーションを担当したロバート・ベティと、アートワークを担当したベイリー・エルダーの合作。
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